目覚めの瞬間〜アドルノ「ヴァーグナー試論」を読む(2)〜

アドルノ『ヴァーグナー試論』(高橋順一訳)へのコメントの続きです。この本ではヴァーグナーに対して「動機」「響き」「音色」「楽劇」などの章立てで厳しい指摘が続きます。その批判は、私としてはほぼ首肯できるものが多いですが、今から見ると時に行き…

ジークリンデの気持ち(ヴァルキューレ第2幕第3場)

ヴァルキューレ第2幕第3場をアップしました。 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/95.html ここは、ジークリンデの独白が続くのですが、彼女の精神がおかしくなっているので、訳してるとつらくなってきます。 ワーグナーはこういうところが「市民の神経を…

アドルノ「ヴァーグナー試論」を読む

同書は今年3月に高橋順一氏の訳で作品社から発行されました。ヴァーグナー試論作者: テオドール・W・アドルノ,高橋順一出版社/メーカー: 作品社発売日: 2012/03/26メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (4件) を見るそれにしても、これは偉…

「ローエングリン」に思う

先週の「ローエングリン」では、やや辛口な感想を書いたのですが、実際に見に行く「効用」というのは、すごくあると思います。今回の演奏は私にとって「ワーグナーのいやな部分」がすごく感じられた点で貴重でした。(決して皮肉だと受け取らないでください…

今回のローエングリン

今日の公演はフォークトを聴きに行ったようなものでした。第1幕で最初に出てきたときの声が一番印象的で、これには驚かされました。また、「グラール語り」も素晴らしかった。 ただ、オケの演奏がピンとこなかったです。前奏曲から「う〜ん」という感じ。ア…

[ヴァルキューレ]オペラ対訳「ヴァルキューレ」第2幕第2場完成

久しぶりに、オペラ対訳プロジェクトに、対訳をアップしました。 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/94.html(次のページにも続きます) ヴォータンのセリフ長い長い。ここは実際劇場で見ていても長く感じるシーンかと思います。ワーグナーには徹底的に説明…

ブラームスとシューマンをきく

3月以来、まるで更新していませんでしたが、その間、前回取り上げたガーディナーのブラームスシリーズを何度も聞いていました。4交響曲と「ドイツレクイエム」の5CDですが、これは本当に素晴らしいです。いずれコメントしようと思っていたのですが、仕…

ガーディナー「ドイツ・レクイエム」

これはとても素晴らしいCDです。恥ずかしながら、というべきかと思いますが、この作品が初めて理解できました。Brahms: Ein deutsches Requiemアーティスト: ジョン・エリオット・ガーディナー出版社/メーカー: SDG発売日: 2012/03/06メディア: MP3 ダウン…

ワーグナー(2)〜パルジファル

ワーグナーの作品は、前回書いた通りの本能的衝動を持っていると思うのですが、その本能の中には「聖性への憧れ」のようなものがあると思います。それがよくわかるのは「パルジファル」、続いて「トリスタン」です。この要素は「タンホイザー」もテーマとし…

ワーグナー

青柳いづみこ『音楽と文学の対位法』より(中公文庫200〜201ページ) ・ところで、その作品で抑制の強い人物を描き、とりわけ抑制の強い人びとを魅了したかに見えるワーグナー自身は、まったく抑制の欠如した人間だったのである。 ・(中略)「ワーグナーは…

ヴァルキューレ第1幕

オペ対に「ヴァルキューレ」第1幕をアップしました。 第1場・第2場 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/92.html 第3場 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/93.html パソコン環境を変えたら、以前訳した作品の一部が段ずれしてしまいました。今回のは現在…

年末の「パルジファル」と「マタイ」

ずいぶん長く更新していませんでしたが、今年で一年が終わりです。 クナッパーツブッシュの62年「パルジファル」を聴いていると、やはりこれ以上の「パルジファル」は考えられないという気になります。歌手もいいのですが、やはりクナの指揮なのでしょう。一…

ブラームス室内楽にひたる秋

少し前から、よく聞いているCD。ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)アーティスト: キョン=ファ(チョン),ブラームス,フランクル(ペーター)出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン発売日: 2008/03/26メディア: CD クリック: 4回この商品を含むブ…

歌曲対訳「四つの最後の歌」

R・シュトラウスの「四つの最後の歌」を訳してみました。1〜3曲はヘッセ、4曲目はアイヒェンドルフですが、どれもとてもいい詩だと思います。翻訳は原文にない言葉を補ったりしているので、かなり自由な訳にしています。 Frühling - In dämmrigen Grüften…

ライプチッヒ・マーラー音楽祭の「8番」DVD

5月のライプチッヒマーラー音楽祭のDVDが発売されたので見てみました。 シャイー=ゲヴァントハウスのこの演奏は、「2番」もいいのですが、やはり「8番」がいいです。 字幕つきなのがうれしいところです。(日本語版ではないですが。) 「8番」にもの…

バイエルン国立歌劇場『ローエングリン』

バイエルン国立歌劇場のローエングリンを聴いてきました。やっぱりワーグナーはいいです。思えばワーグナー作品の観劇は昨年12月の『トリスタン』以来でした。だいぶ疲れてしまいましたが、忘れないうちに少しでもレビューを書いておこうと思います。 良か…

ヴァルキューレ第1幕第1場をアップしました

さきほどは『ローエングリン』の話をしていたのですが、オペ対に『ヴァルキューレ』第1幕第1場をアップしたので、そのご案内です。 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/92.html 最初のト書きが長いうえ、意味が取りにくいので、正直疲れてしまいます。端的…

来週はバイエルンの『ローエングリン』

来週の10月2日(日)の『ローエングリン』公演ですが、なんとか時間が取れるようになったので行けそうです。チケットもゲットしました。ハードスケジュールではあるのですが、楽しみです。 ボータくんとマギーさんとマイヤーさんだから、それを聴くだけで…

ヴェーラ弦楽四重奏団のヤナーチェク「ないしょの手紙」とベートーヴェン

昨日は横浜のみなとみらい小ホールに遠出して、ヴェーラ弦楽四重奏団の演奏を聴いてきました。蒸し暑さでくたくたになりましたが、さすがに残暑もこれで終わりでしょうかね? ヴェーラ四重奏団は日本のカルテットですが、実に素晴らしかったです。横浜まで行…

音楽を文章で表現できるか?(トーマス・マン『ブッデンブローク家の人びと』より)

トーマス・マンの最初の長編小説『ブッデンブローク家の人びと』は、彼の一家のいわば自伝的物語なのですが、初めは力強い商人の家庭だった一家が次第に没落していく過程を描いています。しかし、その没落は芸術と鋭く対置されています。一見、音楽という芸…

ブラームスには秋風が良く似合う(?)

今さら語るまでもない名盤だろうと思うのですが、私は恥ずかしながら初めて聴きました。バックハウスもですが、ウィーンフィルもすごい・・・。このCDは音がとてもいいと思います。ブラームスは43年前の演奏なのですが、全然そんなふうに思えません。(…

残暑に聴く「パルジファル」聖金曜日の音楽

何にも書かないまま40日休んでいましたが・・・。 私は夏はもともと大の苦手で、いつもこの時期気分が落ち込み、やる気がわかなくなるのですが、今年は節電もあるので更にくたびれました。とはいえ、去年に比べて比較的涼しい夏だったのは、救いでした。 …

新日トリスタンと都響ブラームス1番

おとといの新日フィルのトリスタンは、やはり予想通りというか、藤村さんのブランゲーネが良かったです。彼女はピッチがすごく正確だと思うので、ブランゲーネの歌の最初の「ア〜〜〜〜(すごく長い)〜〜〜インザ〜〜〜〜ム」という部分がすごく良かったで…

新日フィル「トリスタンとイゾルデ」

最近ほんとに暑いです。フラフラしてしまいます。 土曜日に新日フィルの「トリスタン」を聴きに行くのが楽しみなのですが、これほど暑いと心配ではあります。このストーリーの舞台設定って夏なのですがヨーロッパの夏なのでカラッとした感じです。だから、と…

金子みすゞ「見えないもの」

今回はいつもと逆で、曲のほうが私です。 少しでも「癒し」になれば良いのですが、そこは素人なのでお許しを。 http://www.youtube.com/watch?v=hlaQVznS-RI いつもは、モーツァルトならモーツァルトの音符の置き方の完璧さに感じ入るばかりなのですが、自分…

モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」より「ドンナ・エルヴィーラのアリア」日本語版

このシリーズはご無沙汰なのですが、たまに楽しんでいただいているとのメールをいただきます。一人でも楽しんでいただけるのは嬉しいので、少しずつ続けたいと思います。(この作業は、編曲するのはそんなに大変じゃない・・・というかむしろ楽しいんですが…

リュッケルトの詩による5つの歌曲

今日は「リュッケルトの詩による5つの歌曲」です。これはマーラーの作品の中でも最も素直な幸福感にあふれていると思います。ちょうどアルマと婚約・結婚した頃なので、全てにその幸福感が現れているように思います。 Fünf Lieder nach Rückert - 1 Ich at…

都響のシベリウス7番

今夜は都響の定期を聴いてみました。ブラームスのピアノコンツェルト2番とシベリウスの7番という曲目に魅かれたもので。指揮はジョセフ・ウォルフ氏。 しかし前半のブラームスは「う〜む・・・」でした。何が良くないかというと指揮者に尽きます。ピアノ(若…

マーラー『嘆きの歌』

最近マーラー漬けだったので、この初期の作品もオペラ対訳プロジェクトにアップしてみました。 http://www31.atwiki.jp/oper/pages/1559.html ちょっと怖い話ですね。特に最後の死んだ弟のセリフがこわいです・・・。あまり存在感のない「お姫様」も不気味な…

プロコフィエフ「ロマンス」

最近、なんとなく、この曲を聴いていました。いかにもロシア民謡っぽいメロディーをプロコフィエフらしいアレンジにしています。 http://www.youtube.com/watch?v=cYoYRBRQ4ro&feature=related 演奏は上記のほうが私はいいと思うのですが、下記は画像がいい…