残暑に聴く「パルジファル」聖金曜日の音楽

何にも書かないまま40日休んでいましたが・・・。
私は夏はもともと大の苦手で、いつもこの時期気分が落ち込み、やる気がわかなくなるのですが、今年は節電もあるので更にくたびれました。とはいえ、去年に比べて比較的涼しい夏だったのは、救いでした。
世の中がいい方向に向かってほしいのはもちろんですが、個人にできることには限界があります。もうこのブログで「時事ネタ」はやめようと思います。趣旨が違うし専門家でもないのに原発やエネルギー問題について書いても仕方がないではないかと後から自己嫌悪に陥ったりもしていたのですが、自己嫌悪に陥っても仕方がないので気を取り直していくしかありません。
とはいえ、もうすぐバイエルン歌劇場が来るのですが、どうもこの時期は仕事あり私用ありで、休日も含めて全然予定が立ちません。残念至極ですが、これはあきらめモードです。カウフマンが来られないようですが、ボータが代役ならいいと思うのですけど。新国『ルサルカ』は行けそうな気がするので、今年はそれぐらいかなあ・・・。まだ「オペラ対訳プロジェクト」ローエングリンをご活用ください。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/181.html
できれば「オペ対」の翻訳を再開したいのですが、どこかでエンジンがかかってくるのかどうか、自分でもわかりません。でも、秋になって気候が良くなれば再開できるかも知れません。
つくづく今年の夏は気持ちが上向きにならなかったので、バイロイトもほとんど聴きませんでした。唯一聴いたのは、NHK−BSで放送したローエングリンでしたが、深夜は辛いので第1幕までしか見られませんでした。(録画にも失敗・・・)でも、この演出・演奏は、私はわりとグッドでした。演出は何だかワケわからんところがあるけれど、基本的には台本をよく読んでいると思います。当たり前のことのようですが、意外とこれができていない(ように思えてしまう)演出家が多い中で、この演出はグッド。第1幕だけですが。
気力・体力が乗らないときはワーグナーは聴かないのですが、さきほど久しぶりにCD(もちろん愛聴盤の62年クナッパーツブッシュ)でパルジファル第3幕「聖金曜日の音楽」を聴きました。
せっかくなので後記で追加

ワーグナー:パルジファル

ワーグナー:パルジファル

ハンス・ホッターの声と悠揚迫らぬオケの音が心にしみいりますが、考えてみると3月以来初めて聴いたような気が・・・。これを歌詞の内容とともに理解できる幸せというのは、考えてみると得難いことかも知れません。ふと思ったのですが、これはイエス・キリストが涙の露に濡れた野原を歩いて行く情景を描いているようにも思えますから、実物にしても映像にしてもそれを描く演出があって良さそうな気がします。ないんでしょうかね?偶像崇拝的で畏れ多いのかも知れませんが、この物語の背後には常に「イエスの影」があるので、日本人が見る場合には、そう演出するとわかりやすいような気がします。もっとも、歌詞として厳密に読む限り、ここで言われている「その人」とはやっぱりパルジファルのことなのですが・・・。ややこしいです。でも、この音楽の最後でクンドリーにキスするのが「代理」としてのパルジファルではなくてイエスだとすると、見ている側は腑に落ちるようにも思えます。
クナの演奏のすごいところは、der Mensch auch heut in frommer Huld sie schont mit sanftem Schritt. (その人=イエスによって救われた人=パルジファルもまた、今日は、謙虚な慈愛を込めて、やさしい足取りで、花々をいたわるだろうことを。)の赤字部分が歌われる際の主題がヴァイオリンで演奏されるところです。音階の上昇につれ、音が完全に「変容する」のですが、これはいつ聴いてもすごいと思います。(パルジファル第3幕の対訳はこちら。http://www31.atwiki.jp/oper/pages/170.html
癒し効果でしょうか。少し気持ちが楽になってきます。
なお、レヴァイン=メトのこの上演はいいと思います。http://www.youtube.com/watch?v=DwdYZWFrBBM&feature=related(上記の箇所は7分15秒くらいですが、クナと比較するのは相手が悪いです。)現実はストレスフルなので、せめて舞台では夢を見させてくれた方がありがたいです。『パルジファル』については特にそんな気がしてしまいます。