バイエルン国立歌劇場『ローエングリン』

バイエルン国立歌劇場ローエングリンを聴いてきました。やっぱりワーグナーはいいです。思えばワーグナー作品の観劇は昨年12月の『トリスタン』以来でした。だいぶ疲れてしまいましたが、忘れないうちに少しでもレビューを書いておこうと思います。
良かったのはボータくんですね〜。彼は本当によかった。「グラール語り」は出だしがやや崩れたものの、その後どんどん良くなっていく。声量もあるし美声だし、言うことないですね。体型は予想通り画像で見るほどは気にならないです。第2幕後半で、エルザが悩んでいるのを見て悩むシーンもうまかったです。素晴らしかった。
エルザのマギーさんは、今一つ調子が良くなかったかも?決して悪くはないのですが、期待度が高いせいか、もうひとつのように感じました。かねがね、このブログでも書いてきましたが、エルザの役は難しいと思います。私は、これはリリカルな声の人がドラマティックに歌う役だと思っているので、マギーさんはもともとがドラマティックに過ぎる感じがします。とはいえ、この2人でやる第3幕の最初の掛け合いは、予習した甲斐もあってなかなか楽しめました。演出はシンプルでしたが、やはりこれが感動しますね。
ヴァルトラウト・マイヤーさんのオルトルートを聴けたのも良かったです。やはり貫禄がありますね。
ケント・ナガノの指揮は予想通り淡々としたものでしたが、幕の最後のほうで盛り上げて行くのは、いかにもベテランという感じです。特に心に残ったのは、第2幕の最後のほうの時間が止まるような合唱と四重唱です。これはすごくいい音楽で、こういう所をきちんと表現してくれるので、好感が持てます。
バイエルンのオケは、管楽器、ホルンの充実度の高さを感じます。弦は重厚感があって古風な感じ。ややもっさりとした重たい感じは録音で聴いているのと同じです。
惜しむらくは、NHKホールの音響ですね。久しぶりに行きましたが、やはりウ〜ムという感じがします。歌はともかく、オケのサウンドがこちら(2階)にうまくやってこない感じ。まあ、これは想定内というかしょうがないです。
演出はわりとシンプルですね。家がどんどんできていくというのは、視覚的には面白いですね。あと、幕間にもスタッフが一生懸命作っている所が発想として面白いです。ただ、最後のところで、みんなが頭にピストルを突き付ける(?)のは、ちょっとドキッとしました。でも、これはなかなか良いフィナーレのような感じもしますね。
いつも思うのですが、ワーグナーって、いざ見に行くと全然長い感じがしません。むしろ第3幕の終わりに近づくと、「もう終わりか・・・」と惜しくなります。これが夢なら覚めないでくれ、とでもいうような感じです。とりわけローエングリンは、エルザと一緒に見ていた夢が覚めて、「さあ、これからどうしようかな???」と野外にほっぽり出されたような感じがしてしまいます。