ジークリンデの気持ち(ヴァルキューレ第2幕第3場)

ヴァルキューレ第2幕第3場をアップしました。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/95.html
ここは、ジークリンデの独白が続くのですが、彼女の精神がおかしくなっているので、訳してるとつらくなってきます。
ワーグナーはこういうところが「市民の神経を逆なでしている」と思います。
あまりくどくど書きたくないのですが、音楽的にはどうも、ここはうまく表現できていないように思えます。
セリフが、普通の意味のオペラの伝統をあまりにも外れすぎていて、ほとんどただの「叫び」になっているような気がします。
それとも、あるいは歌い方の伝統がよくないのかもしれません。ここはジークリンデを歌う人にとっては「鬼門」かもしれません。
それにしても、ヴォータンの最大の罪というのは、ジークリンデにこのような思いをさせていることにあるんじゃないでしょうか。
よく考えてみると、ヴォータンは、ジークムントの死は悲しんでも、ジークリンデのことはまったく考えていないということに気づきます。
ただ、そこにワーグナーの意図があるのではないか、という気もします。
この箇所は、このオペラの最大の裂け目だと私は思います。
逆に、ジークムントは、ジークリンデの気持ちがわからずに「復讐するから大丈夫だ」とか言っていますが・・・。
そういうことではないでしょう。とはいえ、ずれまくりの会話が、ひどくリアリティがあるといえばあると思います。
ただ、男というのは、こういう深く考えないクヨクヨしないキャラがいいんだろうとは思いますが。
こういう箇所を訳しているとワーグナーはきわめて「心理学的」だとあらためて思います。
これは時代的なものであって、ドストエフスキーとか、まさにこんな感じです。
あまり比較されないのが不思議ですが非常に似ています。(二人とも1848年革命のあと亡命したり刑務所送りになっているので、その点も似ているように思う)