ワーグナー

青柳いづみこ『音楽と文学の対位法』より(中公文庫200〜201ページ)
・ところで、その作品で抑制の強い人物を描き、とりわけ抑制の強い人びとを魅了したかに見えるワーグナー自身は、まったく抑制の欠如した人間だったのである。
・(中略)「ワーグナーは、ほかの人びとやほかの芸術の中では抑圧されていて意識されないものを表現する。これが鍵である」とマギー(※『ワーグナーとは何か』のブライアン・マギー)は言う。社会的生活を営む上で、人間が意識下におしこんでしまう本能的欲望。性欲や攻撃的衝動、破壊衝動。
・(中略)ワーグナーの楽劇の登場人物が裏返しのエロティシズムに苛まれているのに、彼の音楽が表向きのエロティシズムを湛えているのは、以上のような理由による。
・そのことがまた、実生活ではとりわけ抑制の強い人々を魅了するのである。
私はこの意見は基本的に同感なのですが、あえて言えば最後の文章は「本能的衝動を必死に抑制している人々」と言い直したほうがいいような気がします。したがって、最初の「ワーグナーは抑制の欠如した人間だった」というのも誤りなような気がしますが、それはどちらでもいいと思います。
ところで、今日、昨年3月以来の「時事ネタ」をほぼすべて削除しました。自分の意見が変わったわけではないのですが、やはりブログの趣旨にあっていないので、音楽ネタだけに戻します。