コペンハーゲン・リング「ラインの黄金」

「黄昏」の訳にはまってしまい、ついに第2幕の最後に達しました。ここを訳すのは本当に面白いです。見直してみてアップしたいと思います。
かねて発注していた「コペンハーゲン・リング」が届いたので、「ラインの黄金」と「ワルキューレ」第1幕まで見たのですが、今日は「ラインの黄金」についての印象を。
・一言で言うと、これは「筋の通った演出」で、私が「指輪」について抱いているイメージに基本的にマッチしています。
・なぜそう思ったかということですが・・・。私はかねがね「指輪」の「時間」というのは「一方向に流れている」ので、演出には、それをできるだけ無視してほしくないと、ずうっと思ってきました。
・ですから、パトリス・シェローの演出は好きなのですが、冒頭でいきなりダムが出てくるのはちょっとな、と感じてしまいます。いきなり現代じゃん、みたいな。新国立劇場のウォーナー演出でも、第2場でいきなり宇宙船が出てきますから、う〜ん?という感じです。まあ、そんなものだよね、と思うので、別にいいのですが。
・コペハンでは「50年前」と最初に字幕に出てきますが、これは説得力のある設定です。その後は、大体こんな感じでしょうか?(別に、ここまで意識することもないのですが、案外そういう観点が無い演出が多いので、念のため記載してみます)

・19XX年  ・・・ アルベリヒが指輪を奪う
・XX+5年  ・・・ ヴォータンが借金返済に苦しみ、指輪を奪いにいく。
・XX+25年 ・・・ ヴァルキューレジークムント兄妹とブリュンヒルデ20歳前後、ジークフリート0歳)
・XX+45年 ・・・ ジークフリートジークフリート20歳、ブリュンヒルデ40歳前後(アラフォー?))
・XX+50年 ・・・ 神々の黄昏 

・さて、冒頭のアルベリヒとラインの乙女たちは、わりとありそうな雰囲気。アルベリヒは、すごくうまい。歌手は、全体にレベル高し。デンマーク人が多いような気がするのに、思っていた以上に、みんなうまいのはなぜ?これまで、デンマークの歌手にイメージがなかったので、ちょっとびっくり。
・雰囲気はありがちだが、酒瓶を割ったりするアルベリヒの演技が細かくて飽きない。「ラインの黄金」の正体は、先にYoutubeで見て知っていたが、大事なところがチラッと通り過ぎて行ったりするので、いいのだろうか?と思ってしまう(笑)
・第2場は、それから何年後か?ヴォータンは、実直な実業家風。フリッカは、どこにでもいそうな主婦。ローゲは・・・。この人の髪型は何なのだろうか?保険の外交員か何かか?とにかく煙草をプカプカ吸い続ける。
・第3場はすごいな。マッド・サイエンティスト2人。カプセルみたいなのの中には、人造人間が入っているのだろうか。
・第4場は・・・。ここは言わないほうがいいかも。かなりショッキング。ただ、私はこれはいいなあと思いました。というのは、アルベリヒの憎悪が、「指輪」全体のキーワードなのですが、色んな刺激に慣れた現代人の感性からすると分かりにくいので、これぐらいエスカレートさせたほうが良いような気がします。
・エルダの場面もなかなか面白い。フリッカはビックリですが、その後のことを考えると、この演出はわかりやすいです。
・ローゲは最後に蓄音器を取り出しますが、あらら最後は・・・。ここもやめときますが、ヴォータンって、初めは実直ないい人に見えたのに、どうしてこうなっちゃったんですかね?そこが面白いと言えば、面白いところではありますが。
・ヴァルハラ入場では、舞台背景にビルが写し出されて、これはきれいな演出だなあと思ったのですが、このビルは何かモデルがあるのでしょうか?何となくそんな感じがするのですが、イマイチ良く分かりません。
・「ラインの黄金」は視覚的要素が強いうえ、芸が細かいので見入ってしまい、あっという間に終わってしまった印象。非常に面白かった。
・オケは「こんな感じかな」という印象でした。指揮も相まって、オケが目立つというより、歌手の引き立て役に徹している感じがします。でも、歌手がいいので、このコンセプトはいいような気がします。その点、今のバイロイトと正反対で、ティーレマン・リングは、逆に「歌手がもうちょっと」です。でも、オケはすごいので、時たま音楽として強烈にはまってしまいます。なかなか両立しないのが残念ですね。コペハンは、第2場から3場への舞台転換シーンとか、もっと強烈にやればいいのにな、とか思ってしまいます。
・それにしても歌手がいいのは、いいです。安心して聴けます。これ、実演見たら、かなり楽しいでしょうね。演出のホルテンは、一見奇をてらっているように見えますが、この作品に正面から取り組んでいるところに好感が持てます。解説書に彼自身の解説がありますが、抽象的な話は何もなく、きわめて具体的な所が良いです。
・まだ全部見ていない段階ですが、これは実は、初めて「指輪」を見る(聴く)人に一番お勧めできるDVDではなかろうか?屋台骨がしっかりしているので、「ワルキューレ」以降も楽しめそうな気がします。