「ニーベルングの指輪」対訳完了

本日、オペラ対訳プロジェクト上に、「ジークフリート」第2幕第3場の対訳をアップし、長い間取り組んできた『ニーベルングの指輪』の対訳をようやく完了しました。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/1843.html
ジークフリート」の第2幕は、アルベリヒとヴォータンの掛け合いに始まり、ジークフリートの森のささやき、龍(ファフナー)との決戦、森の小鳥の歌、アルベリヒとミーメの兄弟げんか、思ったことをそのまま話してしまうミーメと、面白い要素が盛りだくさんで、楽しく訳せました。幕切れも、ジークフリートが希望にあふれてブリュンヒルデの岩山に向かうハッピーエンドなので、偶然ですが、ここで訳了というのも良かったなと感じています。
第2幕http://www31.atwiki.jp/oper/pages/190.html
考えてみると、『指輪』に取り掛かったのは、今から約4年半ほど前の『ジークフリート』第3幕の「ブリュンヒルデの目覚め」からでした。今回、完成を記念して、管理人さんがこの場面の動画対訳を作成してくれました。「オペラ対訳プロジェクト広報室」からどうぞ。
http://oper.at.webry.info/201410/article_4.html
ブリュンヒルデを歌うのは、私の好きなアストリッド・ヴァルナイ。ジークフリートのヴィントガッセンも素晴らしいです。この1954年ごろから、バイロイトの『指輪』のヒロイン・ヒーローは、ヴァルナイとヴィントガッセンのペアが多くなっていますので、この音源はそのプロモーションも兼ねていたのかな?などとも推測します。指揮のヘルマン・ヴァイゲルトは、ヴァルナイの師であり、かつ夫君でもあった優れた練習指揮者です。当時の音楽界が、このような「名裏方」に支えられていたということを実感できるという意味でも貴重な録音かも知れません。
ヴァルナイの自伝によると、ヴァイゲルトは彼女に対して、そのセリフを登場人物がどのような心情で歌っているのか常に理解して歌うように、と教えたとのこと。ある意味当たり前のような気もしますが、一見当たり前の基本中の基本をやり抜くということが、何と言っても重要なのではないかと思います。
とりわけワーグナーの場合は、それが決定的な要素になると思います。動画対訳のおかげで、ヴァルナイの「声の演技」の完璧さが実感できて、私が言うのも何ですが、感動してしまいました。
対訳については、今見ると、当時と今とでは訳し方が変わっているので、少し雰囲気が違うものを感じます。今回ほんの少し手を入れたのですが、やはりいい所もあるので、基本的には大きく直しませんでした。
ただ、今回、完成を機に、第3幕の前半と、『神々の黄昏』にかなり手を入れました。特に『黄昏』は、登場人物の言い回しなどにかなり手を加えています。
『指輪』完成には、さすがに個人的に感慨深いものもあるのですが、私はオリジナルのあるものを翻訳したにすぎないので、やはり原案・脚本・音楽・舞台指示など、ほぼ全てを独力で完成しきったワーグナーという芸術家のスゴさを改めて実感できたのが最大の収穫でした。
今さらですが、私の『指輪』翻訳は、できるだけ古めかしい感じは出さず、現代日本でもそのまま通用するような感じにしています。特に、ジークフリートは、あまり「英雄(勇者)」っぽい感じというよりは、等身大の「ぼく」として現れています。その点、あるいは違和感がある向きもあるかも知れませんが、これは意図的で、そうあるべきものと私は考えています。
さて、広報室の末尾で、管理人さんは「明日から祭です」と書いていますね。意味深な感じですが、何が始まるのでしょうか?