小山由美さんのツェムリンスキー

前回の続きです。このコンサートの前半は、まず「ワルキューレ」からの抜粋でした。フリッカのアリアなのですが、ヴォータンのセリフはカットだったので、答えさせてもらえない亭主みたいで、哀れの念が募りました(笑)。小山由美さんは表現力があるので、聴きながら「フリッカは人の言葉尻を捉えるのがうまいよなあ」などと変な関心をしてしまいました。
さて、そのあとは、ツェムリンスキーの「メーテルリンクの詩による6つの歌」だったのですが、聴いたことがない曲なので、会場でもらった歌詞対訳を読んで、事前にある程度イメージをつくりました。
でも、メーテルリンクって難しいですね。象徴主義、というんですかね。お城、とか、乙女、とかに、何かを象徴させているということなんでしょうが。私は、彼の「ペレアスとメリザンド」も難しいと思います。それと比較すると、ワーグナーって、具体的というか生々しいんですよね。そこが好き嫌いの原因になっているような気もしますが。
音楽は、耽美的というか、けっこう聴けますね。何よりも小山由美さんの表現がいいです。ひた向きさが伝わってくるので、真剣に聴いてしまいます。だいぶ楽しめました。
聴きながら思ったのですが、ツェムリンスキーって、マーラーに似ていて、すごく素朴なメロディーを出してくるのですが、マーラーはそこで「ベタ」なくらい、あるいは感傷的なくらいメロディーを歌わせるのですが、ツェムさん(勝手にそう呼ぶ)は、そうしないですね。
最後の第6曲も、マーラーっぽいのですが、すぐに「ベタ」を回避するイメージです。どうもツェムさんって「ベタ」をやるには、自分のプライドが許さなかったんじゃないかと。
でも、というか、だからこそというか、今ひとつ後世に名を残せなかった作曲家ですね。ツェムさんには申し訳ないのですが、どうも、大作曲家である条件(他のアートもそうかもしれませんが)というのは、「ベタ」を怖れずにやることのような気がしてきました。もちろん、それだけだと「ベタベタ」なので、逆の意味でどうしようもないのですが(笑)。
もちろん、この曲はこの曲でいいのですが。
私としては、オケ付きということなら、ぜひ小山由美さんに歌っていただきたいのはマーラーの「大地の歌」です。一度でいいから終曲「別れ」をライブで聴きたいものです。

ところで、今、ネットラジオで、コペハン・リングを指揮していたショーンヴァントのエルガー「1番」を聴いていたのですが、いやいや、ホントいい演奏でした。というか、こんないい曲だったのだなと初めてわかりました。本来、あたたかく甘美に演奏されるべき音楽で、メロディーをたっぷり歌うものなんだなあと。のっけのテーマからして「ええっ?」と思いました。デンマーク放送響もいいですね。
この指揮者、もっと聴いてみようと思い、ニールセンのシンフォニー全集とオペラ「マスカラーデ」(これは、しかもホルテン演出)のDVDなど発注してしまった私です。やはり自国の作曲家となると、特段の思い入れがあるように予感します。もともとニールセンは好きな作曲家なので、なんか最近、趣味がうまくつながって、楽しい限りです。