アラベラ「姉妹の二重唱」

前回に引き続き「アラベラ」名場面集の日本語訳。第1幕の「アラベラ・ズデンカの二重唱」です。
下記ページの最後のほうです。(↓)
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/615.html
今回は、このデュエットが始まる若干前から訳しています。最初の台詞の「あの男」とはマッテオのことで、ズデンカがマッテオと結婚するよう勧めるので、イライラしてこう答えるわけです。
それに続くアラベラの歌詞は重要だと思います。「男の人って、私の頭の中で急にふくれあがったかと思うと、またすぐに何でもない存在になってしまうの」というのは、すごく女性心理のような気がします。
このあたり男性には分かりにくい心理なので、ホフマンスタールは良くこんな風に書けるよ、と思います。一方で、フラれればフラれるほど一生懸命になるマッテオの気持ちは、特に何も考えなくともストレートに良くわかります(笑)。
ただし、他の部分のセリフを見ていると、アラベラも、いっときマッテオのことを気に入ってた時期があったようなので、これは罪なことをしたものです。ふと『オランダ人』のゼンタとエリックとの関係を思い出しました。考えてみると、現在の本命の男が、別の男との関係を疑って嫉妬するという点が、この二つの作品は良く似ていますね。まあ、ありがちな話なので、たまたまそうなっただけでしょうが。しかし、マッテオにせよ、エリックにせよ、一途はいいけど、単純過ぎて深みのないキャラのように思えますが・・・。
二重唱の音楽は、流麗かつ繊細で素晴らしいと思います。何度聴いても飽きない感じです。Youtubeに色々ありますが、私はこの動画が良かったです。かなり昔の映像ですが。
http://www.youtube.com/watch?v=q2Hpvsuo9Ko&feature=related
前回のポップさんが可愛い系だとすると、リサ・デラ・カーサさんは正統派美女という感じでしょうか。彼女は、カイルベルトCD盤もアップされていますが、歌はこっちのほうがいいかな?
この二重唱は、ズデンカの「お姉さんは光に包まれるけど、私は暗闇の中へと落ちて行く」というセリフで、ほんの一瞬暗くなります。セリフの「光と闇」のイメージとの対応ですが、そのあと、冒頭の屈託のないメロディー(アラベラのライトモティーフ?)が晴れやかに戻ってくる所が見事です。
次回翻訳は、第1幕のフィナーレの予定です。

(追記)
いろいろ見てたら、ポップさんも発見したので、すぐアップしてしまう(笑)。ちょうど私の訳したあたりを歌っています。それにしても、この動画の日本語訳は、ちょっと繊細さに欠けているなあ。これでは単に軽いひとになっちゃうので、ぜひ別の訳を見る必要があります。
ここはポップさんも、ちょっと流している感じですね。二重唱からは実力を発揮するのですが、さわりの部分だけなのは残念ですね・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=ZhGnkCNqHvo
彼女は、やはり声がいいと思います。温かく、情感のある声です。

さらに、これもいいですね。これは、グンドラ・ヤノヴィッツのアラベラ。
http://www.youtube.com/watch?v=MWRk-94yvH4&feature=related
これ、映画風に仕立ててあるようですが、ズデンカもいいです。ほんとに男の子みたい。指揮はショルティなので、きっとDVDで出ているやつですね。