ジークフリート第3幕の翻訳について感じたこと

ちょっと備忘録的に。
ジークフリート」第3幕の、Ewig war ich,ewig bin ich・・・以下なのですが、「私は永遠だった。今も永遠です」との訳があり、私は、「そりゃ誤訳でしょ。これは、そのあと、ewig in süß sehnender Wonneと続くから『ずっと甘い憧れの中にいて、今もいるのよ』という訳になるはず」と思いこんでいたのですが、Youtubeなどで英語の字幕を見ると、Immortal was I...などとなっているのでビックリしました。
これだと「私は不死でした。今も不死です」だから、さっきの日本語訳は英訳を参考にしていたのかも知れません。テオリンさんでも、クプファー演出でもそうなっているから、これはかなりメジャーな英訳ですね。
ティーレマンCDの付録を見ると、これは、ever was I...だから、私と同じ解釈なのでホッとしました。これ、ドイツ人、どう思うんでしょうね?ewigって、普通、述語的には使わないし、immortalに対応するドイツ語は、通常、unsterblichなはずなのですが?
あっ、そういや、コペハンがあったな。私、一番わかる外国語がドイツ語なので、英訳を見ていなかったよ。ちょっと確認してみると、おや、ティーレマンCDと全く同じ訳だ。良かった良かった!Stewart Spencerという人が訳していますね。キミはえらいよ。ちきゅう結局みんな英語で見るから、これで、世界中の人を迷宮に迷い込ませずに済みました。
思うに、「不死」は昔メジャーな英訳だったんでしょうね。とりあえず訂正されていて良かった。
コペハン、いろんな言語があるから、全部見てしまった。中国語はよく分からないのですが、たぶん私と同じ解釈。英訳を見るから、必然的にそうなるのでしょう。「齊格菲!」って何だ?と思ったらジークフリートのことでした(笑)
デンマーク語では、ewigはevigですね。そのまま単語を置き換えるだけで、何の問題も生じません。でも英語だってeverでいいところを、何だってimmortalなんて訳したんだろう?
フランス語も、ティーレマンCDの仏訳と全く同じで、当然同じ解釈。スペイン語も同じですね。
結局、コペハンのこの部分を何度も見てしまった・・・(笑)。これ、でも本当にいいです。映像もそうですが、歌自体に演技があるから、何度聴いても飽きないですね。
あと、もう一つ翻訳上、気になったのは、この歌の直前のSieh meine Angst!で、私はこれ特に考えずに訳したのですが、他の日本語訳を見てると、「私の不安を見つめて!」とかいう訳が多いですね。日本語の語感だと「わかって・・・!」だと思うんですけどね。
他の原語ももちろんそうだろうと思うのですが、日本語って良くも悪しくもやたらと繊細な言語で、ほんのちょっとした言葉遣いで意味が全く変わってきてしまいます。
今、「ブリュンヒルデの自己犠牲」を翻訳しているのですが、これも面白いですね。ほぼ暗誦できる部分なのですが、いざ訳すとなると、意外と難しくて四苦八苦しています。でもここは苦労し甲斐がありますね(笑)。「趣味の日曜大工」とか言いますが、私の場合は「趣味の日曜翻訳」です。だいたい出来たのですが、もう一回、音楽を聴きながら直してみたいと思います。