プロローグのノルンシーン〜世代間不公平?

「黄昏」の一番最初の情景である「3人のノルン」のシーンを訳しました。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/197.html
これ、ト書きには明瞭に、第1が「年長」で、第2は「少し若く」、第3は「最年少」と書いてありますが、ほとんどの演出は、みんな同じような年恰好に描いています。シェロー、クプファー、新国のウォーナー・・・みんなそうですね。メトのDVD(レヴァインの)は見ていないのですが、どうなのでしょう?私は、ノルンは「年齢」はともかくとして、キャラ立ちしていたほうが分かりやすくて良いと思うのです。コペンハーゲンリングは、わりとキャラのある珍しい例です。(ラインの娘達はキャラ分けしてないので意図的です)
上記に対応して、第1は「過去」、第2は「現在」、第3は「未来」が担当分野(?)で、みんなで「運命の綱」を編んでいます。
「年齢」に着目すると、実は、いろいろ面白い事に気がつくのですが、一番積極的なのは年少の第3のノルンで、冒頭で「まだ夜だわ。綱を紡いで、歌いましょうよ」と姉達を誘うので、お姉さんたちは「仕方ないな・・・」とでも言うような感じで、仕事に取りかかるイメージです。
歌の進行に応じて、「第1」から「第2」へと綱が投げられて行くのですが、「第3」は「それを背後に放り投げる」とト書きにあります。(第3は舞台の一番後方に位置しています)また、「北から投げ返すわよ」というセリフもあるのですが、この「背後」とか「北」というのは、おそらく「未来」を意味しており、未来に向けて綱の先端を送っていくのが彼女の役目のように思えます。
ところが、過去と現在の経緯から綱はうまく編めていないため、最後には切れてしまいます。その直前の「第3」のセリフは印象的です。「綱の張り方がゆるすぎて、届かないわ。私が北に向かって先端を投げられるように、もっと、ピンと張ってちょうだいよ!」
どうも現役世代のツケを全部将来に負わせているどこかの国の姿のように思えてなりません・・・。このシーンは、色々な読み方が可能なので、そんな風に演出してみると面白いような気がしますが、どうでしょうかね?特に、物語の本筋と関係なくても良い場面ですから、許されるでしょう。
そんな見方をしていると、「第2」は綱を「第3」に丸投げするだけの無責任キャラのようにも思えてきます。ただ、第1も第2も「わかっちゃいるけどどうにもならない」という閉塞感が全体に漂っています。最後は、3人ともくず折れて「ついに破綻した・・・」とでもいう感じでしょうか?
・・・このネタ、これ以上やると、重たすぎなので、このへんにしときます(笑)。「黄昏」も、あともうちょっとになってきました。