ハーディングとマーラーチェンバーオケの4番
私は素人なので、あまりに自分の趣味と合わないもの以外は面白いと感じる傾向があるのですが、この「4番」も面白かったです。もともと、6月7日にオーチャードホールで同一曲目を演奏してくれることになっていたので行く予定にしていたのですが、ますます行きたくなりました。
いつもそうですが、ハーディング=マーラーチェンバーオケは、いたずら心のようなものが感じられていいですね。一人一人ソロプレーヤーのように動くところがあって、とても面白いです。録音とライブとでは全然違う音色に聞こえるはずですが、これはライブがとりわけ良さそうです。この日の演奏とは、また微妙に違った演奏をしてくれるような気がします。
ソプラノのエルトマンさんは「角笛」ではあまりピンとこなかったのですが、「4番」第4楽章は良かったです。声のムードや歌い方が、この曲とマッチしている感じがします。「角笛」というのは、もっとアイロニーを効かせないと面白くないところがあり、そのへんは「年の功」が必要かも知れませんね。
なお、歌ったのは「むだな骨折り」「この歌を作ったのは誰?」「この世の生活」「ラインの伝説」「美しきトランペットの鳴り響くところ」の5曲でした。順番も妥当な感じ。最後の「美しきトランペット」は「角笛」を代表するような歌曲ですが、私自身は「ラインの伝説」が大好きです。
考えてみると、3月にアンゲリカ・キルヒシュラーガーさんのリサイタルを聴くための予習として、上記のうち3曲を訳したのでしたが、震災・・・というか原発事故のせいでお流れになってしまったのでした。楽しみにしていましたが、やむを得ないですね。それにしても、はるか遠い昔のような感じがしてしまいます・・・。
http://d.hatena.ne.jp/wagnerianchan/20110304/1299240171
ハーディングとマーラーチェンバーオケは来てくれて嬉しいですね。
ところで、今回のマーラーフェスティバルは、マーラーを改めて考えてみる良いきっかけとなりました。これは単なる一つの仮説ですが、私見ではマーラーには「ユートピア路線」と「現実闘争路線」の二つがあり、それが長い間並行して走っているのですが、やがて結びあわさり奔流のように流れていくようなイメージです。
具体的には、「1番」と「2番」は「闘争系」、「3番」と「4番」は「ユートピア系」、「5番」「6番」はまた「闘争系」、「7番」で調和しないままミックスされ、「8番」は「ユートピア系」の最高傑作、「大地の歌」「9番」「10番」で「真の渾然一体」になっていると思います。もちろん定式化するとどこかに矛盾が生じるので楽章の中には例外もあります。特に「5番」は最初の2つの楽章は闘争系なのに、第3楽章からユートピア系に移る感じですね。そこにこの曲の魅力があるのが、今更分かってきました。6番もところどころ(カウベルが鳴るところ)に「ユートピア系」が浸食しますが「超闘争系」ですね。
上記のように書くと、常に両者の要素があるとの反論もあると思いますし当然その通りなのですが、「組曲」ではなく「交響曲」というまとまりを打ち出しているからにはやはり「主調」があるはずだと私は思います。その意味で一番何がなんだか分からないのは、私には「7番」で、だからこそ面白いのだという見方もあると思います。「6番」は一番わかりやすい曲だと思いますが、意外とそう思われていないかも知れませんね(笑)。芸術を考えるとき「受容」というのは実に面白いテーマだと思います。