生命の水って何だろう?
相変わらず予習していたのですが、このオペラの第2幕は、間に皇帝と皇后のモノローグを挟んで3回バラク家の家庭不和が描かれるという構成になっていますね。しかも回を追うごとに、夫婦関係が険悪になっていき、最後に破局(同時に和解のきっかけ)を迎えます。とはいえ単に険悪になるだけではなく、その中にバラクの妻の微妙な心理が織り込まれていくのが何と言っても面白いところですね。
さて、それはそれと、第3幕では、皇妃が「生命の水を飲め!」と勧められて「いやです!」と断るのですが、この寓意は一体何なんでしょうかね?このオペラはほかにも寓意的な表現が多々あるのですが、その多くは少し考えると分かるのです。ただ、この「生命の水」だけは曖昧すぎて今ひとつ良く分かりません。
おそらくは「永遠の命」みたいなもので、これを飲めば皇妃は影を得て皇帝も救われるが、バラクとその妻は救われないという設定になっているように思えます。バラクたちを犠牲にして自分だけ救われては意味がない、ということで皇妃は「ich will nicht!」と言うのでしょう。まあ、見方によっては安易な展開のようにも思えますが、ホフマンスタールとシュトラウスは真剣そのものだったと思います。第一次大戦の影響は、むしろその点に見た方が良いのではないかと思います。もっとも、その真剣さが、やや浮世離れしている所が、いかにもドイツ・オーストリア的とも言えますが。
もちろん「生命の水」については、これに限らず多様な解釈が可能だと思いますので、あまり限定せずに考えた方が良いかも知れません。