「女狐」翻訳メモ(1)
このひと月半ほど、ずうっとヤナーチェクの『利口な女狐の物語』を訳しており、完成したので「オペラ対訳プロジェクト」上にアップしました。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/415.html
「解説」にも書いたのですが、チェコ語がそんなに出来るわけでもないのですが、文法をある程度独学したので、あとは、とにかく辞書を引きまくるという感じでした。「解説」の最後に、ディスコグラフィを書いたら、管理人さんが丁寧にリンクを貼ってくれました。
さて、やはり訳してみると色々気がつくことがあるので、当分、そのへんをメモしていきたいと思います。まさに「メモ」になりそうなので、読んで面白いものかどうかはわかりませんが。
今回は初回なので「チェコ語」について。チェコ語の参考書には「チェコ語は世界で最も難しい言語だと言われます」とチェコ人が書いたりしていて「それってもしや自慢のつもり?」と思ってしまいますが、その理由の一つは、名詞などの格変化が7つもあることのようです。また、動詞の変化も多様なので、確かに難解ですね。ただ、文章を読むだけなら、最終的には調べればわかるので、時間がかかるというだけですね。話すのが大変だろうとは思います。
一番、感覚的にピンとこないのは時制で、動詞には通常、完了体と不完了体があることです。これは、ロシア語もいっしょとのことなので、スラブ系の言語の特徴なんでしょうね。「完了体の現在形は未来を表す」というあたりで、頭が???になります。まあ、理屈じゃなくて、そういうもんだと思うしかないですね。
ロシア語の話が出たのですが、「オペ対」の「ボリス・ゴドゥノフ」(表記はキリル文字じゃない)を見ていたら、単語がかなり似ていることが良くわかりました。参考書には「チェコ人が一番理解できる外国語はロシア語。一番使いたくない外国語はロシア語」と書いてありました。ポーランド語はもっと良く似ています。
それにしても、「女狐」の言語は、さらに「モラヴィア方言」なので、辞書を引いていると微妙に綴りが違うのが一苦労です。万一、これでチェコ語を覚えてしまうと、「山形弁をしゃべる外国人」みたいになってしまうので用心が必要です。ヨーロッパをはじめ世界中のオペラハウスで「モラヴィアなまり」を歌わせているヤナーチェクは「してやったり」かも知れませんが。
こんなことを考えると、ヤナーチェクはセリフに無頓着だったようなイメージを持ってしまうのですが、一語一語きちんと見ていくと、けっこうこだわりのある優れたリブレットなように思えてきました。そのあたりは次回にします。