メッツマッハーの「マーラー6番」

新日本フィルのトリフォニーホール公演を聞いてまいりました。最初に雑談ですが、こんな音楽を作る人(マーラー)を上司に持つというのは、さぞやエキサイティング・・・というか、波長の合わない人は、やってられないだろうな、とか、聞きながら余計なことを考えてしまった私です。
さて本題。生メッツマッハーを初めて見ましたが、1階のかなり前のほうの席だったので、肉眼で良く見えました。予想通り、なかなかカッコいいおじさんでした。タクトを使わず、人差指を立てたりしていると、サッカーの監督みたいに見えます。曲自体が、しじゅうドンパチやっていて、その点も音楽というより、スポーツっぽいので、余計そう感じてしまいます。
全体に、かなり早いテンポでキビキビと鋭くやる演奏でした。特に、第2楽章は、たいがいのCDよりも相当早いテンポだった気がしますが、わりと中だるみしがちの楽章なので、このテンポで丁度いいのかも知れません。
第2楽章から終楽章までは、休憩を取らずに、ずうっとつなげてやっていましたね。これは、第2楽章の最後のほうでようやく少し緊張がほどけ、そのまま第3楽章につながって行く、という流れを重視しているのかも知れません。
私の感想としては、第1楽章の冒頭から気合い十分という印象で、熱のこもったいい演奏だったと思います。あえて言えば、第3楽章のソロの所とか、もっと情感があってもいいのかな?という気がしましたが、こういう所は日本のオケかな、と思いました。
あと、第4楽章も、もう少しメリハリがあっても良かったかも知れません。例えば、再現部の終わりで、金管楽器が疲れ切ったように短いモティーフを繰り返す印象的なパッセージ(音楽が無いとわかりにくいですね。やや退廃的で、ベルクの音楽を思わせます。)なんかは、もっとドヨーンとやるのが普通ですが、ちょっとアッサリしすぎだったかも知れません。最後の序奏の再現(低弦が静かにモティーフを奏し始める直前)のトゥッティも然りです。
とはいえ、熱気のこもった佳演だったと思います。ブラヴォーがいくつも上がってましたが、ブーイングも若干ありました。音響的には、曲の特性もあり、全然まろやかな感じはなく、管楽器がつんざくような音を出したり、低弦が打楽器みたいな感じで使われていたりと、相当、鋭角的(暴力的?)な感じです。
私としてみれば、この曲は、いい指揮者がきちんと演奏してくれれば、十分楽しめる曲なので満足です。生きるって大変ね・・・って感じで、それを自分以外の人が頑張って表現してくれるので、なぜかそこにカタルシスがあります。
あと一つ言い忘れたのですが、これは舞台裏でカウベルが鳴るのですが、ホールの特性(と自分の座席の場所)のせいなのか、今一つ舞台裏な感じがせず、「異化効果」みたいなものが、若干うまく出ていなかったような気がいたします。
最後に一つ。チラシを見ていたら、来年5月にマーラーと奥さん(アルマ)の関係をテーマにした映画を上映するようで、BGMとして、サロネンが10番その他を振っているみたいです。面白そうなので、これはちょっと見に行ってもいいかも知れません。だいぶ先の話ですが。