N響シルマーの「パルジファル」を動画で聴く

この前も紹介したのですが、4月4日の東京春祭「パルジファル」(東京文化会館)が動画で配信されております。
http://www.tokyo-harusai.com/news/news_594.html
今日、全曲通しで聴きました。改めて聴くと、ほんとにいい演奏なので、全部録音してしまいました。期限付き配信のようなので、これで万全です。ときどき、ネットの接続が切れるので、さかのぼって録音し直したりしてたので、何回も聴いてしまった(笑)。こんな長い曲、何度も聴いていると、気分は完全に「モンサルヴァートの山の中」です。(何のこっちゃ)
この動画、音声だけなのですが、東京文化会館の音響込みで、きれいに録っていて、二重マルですね。CD聴くより、いいかも知れないというぐらい。特筆すべきは、第2幕の最後で城が崩れ落ちる所の「ドラ」(←何と言う楽器か良く分からない?)ですね。ずっと舞台に置いてあるので「何じゃこりゃ?」と思っていたのですが、最後の最後に「グワシャワワン」と鳴らしました。ここだけ聴いてみても面白いですよ。あと第1幕の「舞台転換の音楽」の最後で小太鼓がこんなに鳴っているんだな、ということに初めて気付きましたが、これはややマニアックか?
この演奏、何と言っても素晴らしいのは、ウルフ・シルマーさんの指揮とそれに答えるN響です。第1幕前奏曲ののっけからして、いいです。「パルジファル」って「間(ま)」の音楽なので、その間の取り方がシルマーさんは絶妙だと思います。もちろん趣味もあると思いますが、間の取り方がわざとらしくなく、とても自然なのです。
オケの音も素晴らしいというか、一つに溶けあっている感じですね。なぜ、こんなにはまっているんだろうと不思議に思うぐらいです。
歌手は主役キャスト全員が良いというのは・・・すごいなあ。改めて聴くと、グルネマンツ(ペーター・ローズ)が、実に素晴らしい。この人、ディクションもいいと思います。パルジファルのブルクハルト・フリッツの声もきれいだし、スタミナ切れせず、安定感抜群。いいパルジファルです。
だから、第3幕が聴けるんですね。シルマー、ローズ、フリッツの盤石トリオ。「聖金曜日の音楽」がいいのはもちろんですが、その前も聴かせる。生演奏でもそう感じたので、身を乗り出すように聴いてしまったのですが、これも貴重な体験でした。
アンフォルタスのフランツ・グルントヘーバーは、かなりお歳のはずなのに、年齢を感じさせませんね。苦悩がひしひしと伝わってくるアンフォルタスです。
クンドリーのミヒャエラ・シュスターさんは、やはり第2幕の迫力でしょう。改めて聴くと、何よりも最後の盛り上げ方がすごい。どんどん迫力が増していき、最後の「迷え、迷え」(イッレ、イッレ)なんか、もう呆れるぐらいすごい。ド迫力です。本当に呪いがかけられた気分になる。この人は、オルトルート(ローエングリンの)も歌われるようなので、これもすごくいいはずです。「魔女系」が似合う方ですね。
クリングゾルのシム・インスンは、録音で聴くと、ライブで感じたほどじゃなかったです。何でいいと思ったかと言うと、押し出しがあって、手の演技を付けて歌っていたのが、印象を上げたんでしょうね。こういうのって舞台では大事ですね。声が良くて、若いから、これから活躍しそうな人です。
ところで、録音だと捉えきれていないのは、舞台裏からの音ですね。これが録音の限界ということでしょうか。第1幕の女性合唱や最後のアルトの声その他が、ホールではもっとはっきりと聴こえてきたのですが、すごく小さく聴こえます。でも、オーディオのボリュームを上げればいいんですね。便利な世の中になりました。
日本人歌手は、「花の乙女6重唱」はいいのですが・・・。
合唱(東京オペラシンガーズ)はいつもながら、いいですね。合唱が出てくる所では指揮がわりとアップテンポなので、あるいはもっと「聴かせる」ことができるかも知れませんが。
いやあ、ほんとにレベルの高い演奏でした。間違いなく、今まで聴いたコンサートで何本目かの指に入りますね。惜しむらくは「舞台」が無かったことだけです(笑)。コンサート形式って、そこまでやるなら簡単でも演出すりゃいいのに、と思うのが常なのですが、ここまでいい演奏だと、あまり不満はないですね。かえって演奏自体のレベルが高くなることもあり得ますね。
来年は「ローエングリン」をやるので、それにも期待することにします。