二期会パルジファル(2)

今日も行ってきました。主要歌手陣が総入れ替えなので、やはり行ってよかったと思いました。
素晴らしかったのは、グルネマンツの山下浩司氏ですね。ディクションがいいので「歌の演技」が素晴らしいです。第3幕が聴きごたえがありました。盛大な拍手を浴びていましたね。
クリングゾルの友清崇さんもよかったと思いました。この演出は、クリングゾルに焦点を当てているので、特にそう感じましたね。この前のバイロイトもそうですが、DVDとかでもステロタイプなクリングゾルばっかりなので、こういう描き方がいいですね。第2幕第1場って、こんないい演奏・演出って滅多に見られないのではないかと思いますよ。演劇的な面白味があるとなしとでは大違いです。
演出といえば、最後の幕切れのところで、パルジファルが「軍服と制帽」で出てくるのが一瞬「えっ?」という感じで考えてしまいますが、これは「軍人として社会に貢献することになった」ということなんでしょうね。その前の「聖金曜日」の場面の映像はその前振りなのでしょう。これはヨーロッパだとすぐ分かるのかも知れませんが、日本で演出するなら「企業戦士になった」というほうが分かりやすいかも知れません。たぶん悪い意味合いじゃないのですが、クンドリーとしてはそういうのにはついていけないので旅立ってしまうということでしょう。でも、そうできるのが彼女の救いということかも知れません。やはり、きちんとツボを押さえている演出だと思います。
第1幕の「舞台転換の音楽」で、2階にアンフォルタスがいて、1階でダンサーが踊るところは、文字通り「聖なるものと心の病」だと思います。私にはよく分かるのですが、初めて見る人には、逆によく分からないかも?と不安になってしまいます。なにも私が不安にならなくていいのですが・・・。クラウス・グート氏の演出は、たぶん「心理学的演出」なのですが、解釈が「深読み」じゃなくて素直なので、基本分かりやすい方向になっていると思います。(2005年ザルツブルクの『フィガロ』DVDもそう感じました)
最後にアンフォルタスとクリングゾルも「仲直り」するのですが、「肩の荷が下りてよかったね。アンフォルタス」と言いたくなります。ちなみに、第1幕でティトゥレルが言う「アンフォルタスよ。仕事しておるか?」のブキミさときたら、これもほとんどホラーですから、最後に癒されるとホッとします。明日からはこちらが「仕事しておるか?」状態だけど。ハー(深いため息)。う〜ん・・・あの幕切れというのは、よく分かるような気がしますよ。社会というのは難しいものです。
演奏は、昨夜もそうだったのですが、第3幕の前奏曲がすごく印象に残りました。愛憎と諦念の交差の渦にグイグイと引き込まれるようなものがあります。特に今夜は気持ちのこもった素晴らしいものだったと思います。
それにしても、金曜日を挟んだだけでほぼ4日間ぶっ続けで演奏し続けた皆様、お疲れ様でした。60周年記念にふさわしい偉業だったと思います。こんないい「パルジファル」を2回も見られたというのは実に幸せなことでした。