二期会パルジファル

やはり実演はとてもよいですね。
ここ数年オペラに行った中で、一番よかったです。自分が最も好きな作品ということもあるでしょうが。
クラウス・グート氏の演出は、この作品を真正面からとらえていて、素晴らしかった。現代的な捉えなおしと言っても、これならすごくよく分かります。
また、舞台装置の使い方がうまいので、第1幕でまったく眠気が起きなかったです(笑)
(第3幕はちょっとだけ寝ました。「聖金曜日」の前のシーンは、どうしても眠くなります)
演奏もとてもよかったです。
歌手陣は歌もいいのですが、「声の演技」と「仕草の演技」も、とても素晴らしい。とりわけ、アンフォルタスの黒田博さんの熱演が、歌唱ともども光りました。主要歌手陣は、みなさん、とってもいいです。安心して聴いていられますよ。花の乙女さんたちの音楽もよかった。
指揮の飯守泰次郎氏は、さすがです。とりわけ印象的なのは、第1幕で聖杯の儀式が終わったあとのオケだけの「後奏」。ここをこんなに悠然とやる演奏って、稀有じゃないかと思います。マニアックですが。もちろん、そこに限らず、本当に「パルジファル」を感じさせる音楽になっていると思います。読売日響を久しぶりに聴きましたが、金管楽器のレヴェルが高かったと思います。素晴らしいですね。
面白かったのは「聖金曜日の音楽」は、むしろサクサクっと速いテンポでした。どうも、この演出の関係かもしれないのですが、あえてここでクライマックスを作らないということかも知れませんね。それでも、音楽の力がすごいので、十分感動してしまうのですが。
幕切れの合唱と音楽は、賛否両論なのですが(というかアドルノが批判しているのがみんなに伝染しているような気がする)、実演を聴くと、これ以上の音楽って、ちょっと想像できないぐらい素晴らしいと思います。合唱の「この上ない救いの奇蹟だ」とのセリフに合わせて、「この上ない和声の奇蹟だ」と思ってしまいますよ。演奏がいいので、そう感じるのだと思います。
こんなに感銘を受けたのは久しぶりなので、この際、当日券があれば、明日も行ってこようと思います。