「家族」をはみ出るブリュンヒルデ〜ヴァルキューレ第2幕訳了

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長い道のりでした。この幕、長いです。でも、この幕はほんとうにいいですね。ワーグナーのエッセンスだと思います。
妻が夫婦の不満を訴え、夫は不倫相手(エルダ)との間に作った娘に愚痴り、娘(ブリュンヒルデ)は非行(?)に走り、ジークリンデはトラウマに悩み、愚直なジークムントは殺される・・・という恐るべき展開ですが、唯一の救いは、ブリュンヒルデが一本芯の通った女性だということですね。
ヴォータンの最後のセリフは、私はかなり強い調子で訳しましたが、ここを最大級の怒りにしないと第3幕につながらないと思います。ヴォータンにとっては「掟を破る女」(フェアブレッヒェリン=犯罪者)というのは絶対に許せないことだったのですが、それは一面的なものでしかありません。そのことは第3幕後半で明らかになっていきます。
「解放」と「挫折」の繰り返しが、この長いオペラ(作品)のテーマですが、それは結局「近代」を超えていない(超えなくてもいいのですが)私たちの宿命でもあります。
あと、第4場の「ミットゲフュール」という言葉を「同情」と訳していたのですが、これは「共感」という日本語のほうが直訳ですし、はまりますね。前回の記事で、そういう意味のことを書いているのに、何をやっているんだということで、そこは直しました。