5月21日の新日フィル〜ブラームスの「至福」マルチヌーの「望郷」

トリフォニーホールに聴きに行ってきました。最初にドヴォルザークの『交響的変奏曲』が演奏されましたが、不明にして私この曲初めて聴きました。う〜む。なんといい曲でしょうか。ドヴォルザークって本当にあなどれない作曲家ですよ。(別にあなどってませんが・・・)全てが良いのですが、最後にフーガになるところなんか本当に感心します。まだ第6交響曲を書く前らしいですが、もう堂々たる大作曲家です。彼はやや過小評価されすぎかも知れません。
次は、ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」。この曲、私はライブで聴くのは初めてですが、録音でもとんとご無沙汰で20年ぶり(!)ぐらいに聴いたかも知れません。私、中学生の頃にクラシックを聴き始めた頃はブラームスのファンで、彼のオケ作品と室内楽作品は録音でほとんど聴いたと思います。
その頃「ワーグナー」というのは「なんなんだ、この俗物は!」(笑)と思っていたのですが、ワーグナーの『トリスタン』や『パルジファル』に接して「こ・・・これは・・・」と思い、それ以来どちらかというとワーグナー派になってしまいました。
ただブラームスが嫌いになったことは一度としてありません。どちらかというと彼の音楽は「難しい」のだと思います。だから実は少年の頃は全然理解できていなかったのだと思います。もちろん今もたぶん十分には理解できていないでしょうが・・・。前にも書いたのですが、彼の音楽はライブで聴くべきだと思います。録音と全然違います。もちろんどんな作曲家の作品も違うのですが、ブラームスのオケ作品は極端だと思います。(彼に限らず基本的に弦楽器の室内楽は絶対にライブで聴くべき。録音じゃ良さが分かりにくいです。自分で楽器をやる人には言わずもがなですが、聴くだけのファンにはぜひ室内楽のコンサートには行っていただきたいです。)
今日の演奏もあまりに美しくてぼおっとしてしまったのですが、一つ改めて感じたことは、彼の音楽は中低声部(主にチェロ)の分散和音が実に魅力的です。第1楽章の第2主題の再現部なんか、もう体じゅうがむずむずするぐらいロマンティックです。(例えば「4番」の第1楽章の冒頭なんかもチェロの和音が魅惑的ですね。いい演奏だとこれはたまりません。)
あと第2楽章の冒頭の、ソロ楽器のユニゾン(オクターブの)って、これはきっと録音だと良さがわかりませんね。ライブだと唸ってしまうほどいいですよ。なんという渋さでしょうか。渋すぎです。
ブラームスに故郷帰りするような「至福」を感じるのは、やはり歳なんでしょうか・・・。(←というほどの歳ではないです。ジョークです。今の年齢の2倍ぐらい生きて初めて感じたいものです。)
でもこのコンチェルトって、ソロもわりと地味です。いや、今日のお二人(ヴァイオリン:アリッサ・マルグリス、チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ)は全然地味じゃないんですよ。美女2人なので見ているだけで楽しいです(←ただのおじさん)。地味なのは音楽で、メロディーがないんですよね。ブラームスってもともとそうなのですが、この作品は晩年のため、とりわけそう感じます。でも、地味な音楽を実に愛情をこめて演奏されていたような感じです。これはすごくいい演奏だったと思います。あまりやらない曲ですが、聴きに行って良かったです。
さて、最後のマルチヌーの『交響曲第3番』。実はそんなに期待していなくて「滅多に聴けない曲だから聞けりゃいいや」というぐらいの軽い気持ちだったのですが、なかなかどうして充実の力演でした!!アルミンク氏は、復帰していただいて有り難いですよ。曖昧さを残さず、シャープにこの作品を彫琢していたように思えます。
第2次世界大戦中の作品なので運命と闘うような悲劇的な作品です。第1楽章も第2楽章も良かったのですが、私がとりわけ感銘を受けたのは、第3楽章の中間の静かな部分ですね。よく映画などで、宇宙船から孤独に地球を眺めるような場面がありますが、弦楽器を中心に、そんな感じの音楽が続きます。そこにオーボエのソロが長い嘆きの歌を歌っていくのですが・・・。アメリカにいたマルチヌーがチェコへの望郷の思いを込めて書いたとしか思えないパッセージです。コンサートが終わってからも、なんか胸が締め付けられるような思いがしました。
この曲が分かった、もしくは分かる糸口ができたので、今日のコンサートは本当に良かったです。