ネットラジオで聴いたアーノンクールとサラステ

う〜む。仕事上のトラブルをかかえたまま今年はタイムアウトになってしまった。新年からまた気をつかうと思うとげんなりしますが、忘れることにしよう・・・。

さて本題ですが、クリスマス・シーズンのせいかネットラジオの番組が充実していて、好きなものを選んで聴いていると、ヘンな取り合わせですが、結果的にこの2人の演奏を主に聴いていました。他の演奏も聴いたので、それについても書いてみます。

ハイドン天地創造」(アーノンクール、コンツェントゥスムジクス)
 今年のシュティリアルテの演奏。序曲からして、うなってしまった。全曲録音できたので、これで当分楽しめます。それにしても、この前この曲で来日していたので、行くことができなかったのは残念です。さぞ満員大盛況だったろうと思いきや、galahadさんの記事によると空席が目立ったとのことでビックリしました。「みんなこれを聴かずに何を聴いているんだろう?」というのはもっともな話です。もう来日しないと思いますが、アーノンクールにはこのまま長生きしてくださいと心の底から願います。

スメタナ「我が祖国」(アーノンクール、ヨーロッパ室内管)
 これも上記と同じ時の演奏。最も気になるのは第5曲・第6曲で、ここはチェコの歴史的なコラールが使われていたりするのでチェコ人でないと分かりにくい曲だと良く言われます。アーノンクールが純音楽的にどう演奏しているか聴きたかったのですが、やはり素晴らしかった。特に第5曲の最初のコラール音型が何度も繰り返される部分、第6曲の木管楽器だけの長いアンサンブルなどが圧巻。最後のテンポの変え方なども見事としか言いようがないです。
 もちろん前半も第4曲の最初の現代的な和声の連続や第2曲の静謐な部分(要は「モルダウ」の月の光で川が輝いている音楽です。こんなに熱心に「モルダウ」を聴いたのは小学校の音楽の授業の時以来かも?(笑))などが印象的で、その他一つ一つ言い出すとキリがありません。
 スメタナのこの作品はかなり年代が新しいのですが、こうしたアプローチでも曲は生きますね。アーノンクールスメタナづいているのか来年は「売られた花嫁」をやるようなので、これにも期待です。

ヤナーチェク「女狐」(アンドリュー・デイヴィス、スカラ座。今年7月の公演)
 デイヴィスの指揮はなかなかいいのですが、歌手が「う〜ん?」ですね。森番はけっこういいのですが、肝心の女狐と雄ギツネもあんまり。通常音を伸ばす所でブチブチ切って歌うのは「ピリオド歌唱(?)」なのでしょうか?でも、演出は面白そうな感じがします。森番がしょっちゅう「ハハハハ」と高笑いをしているのも面白い。こんな配役でしたが、誰が誰の役なのかイマイチよく分からなかったりします。森番以外の牧師、校長なども良いので、案外そちらに力を入れているのかも知れません。
 アラン・オピー/Sim Tokyurek/イアン・トンプソン/Laszlo Polgar/David Wakeham/ローズマリー・ジョシュア/アンドリュー・デイヴィス指揮 (2010.7.18 収録)

ブルックナー「9番」(ロジャー・ノリントンシュトゥットガルト放送響、今年7月)
 最近この曲を色々な演奏で聴いていた(その評は次回アップしようと思います)ので、これも聴いてみましたが、一言で言うと「なんじゃこりゃ」です。まあ、ここまでデフォルメすると、逆に「次は何やるのかな?」と思いますから「お笑い音楽」ですね。真面目に演奏したのにさっぱりだというより、かえって好感が持てるかも知れません。それにしても、こういうのは「ピリオドもどき」とでも言うんじゃないですかね?
ノリントンはこの前モーツァルトを聴いてみて、そちらはそんなに悪くないような気がしましたが。この演奏だと、ブルックナーなら「0番」とか初期の作品がむしろ良いかも知れません。でも「ブラボー」がけっこう出ていたのには驚きました。それはそれで良いのですが、ここから新たな発見があるようには思えないので、いまひとつ不安なものを感じるのは余計なお世話でしょうか??

シベリウス「5番」(ユッカ・ペッカ・サラステ。オケが不明)(※追記。あとで考えたら、おそらく2010年9月10日の「シベリウス・フェス」におけるラハティ響との演奏です) 
先程の「天地創造」をBBCで聴いた際、ラッキーにもその前に放送していました。ノリントンとは「天地逆転」(笑)みたいな正統的な演奏。一見オーソドックスながらも、一音一音への非常なこだわりが感じられます。ピリオド演奏がフィードバックしてきて、オーソドックスな演奏にも良い作用を及ぼしているような気がします。もちろん、この指揮者だからそうなっているとも思えますが。第3楽章にとりわけ感銘を受けました。木管の清澄な音色や、最後のクライマックスを引っ張りに引っ張る所など感涙ものです。それにしても、オケがどこなのか聴き逃してしまったので、気になります。(BBCのアナウンサーはフェスティバルディレクターのサラステと言っているのですが、それが何のフェスティバルか聞いていなかった)

マーラー「9番」(サラステオスロ・フィル)(※追記。おそらく2010年11月11日のオスロ定期演奏会
 サラステの手兵との演奏です。聴き惚れてしまい、ほかのことが手につかなくなってしまった。この人の円熟ぶりが良くわかりました。出だしから良いのですが、5小節目からのビオラの6連符の音色が「むむむ、これは・・・」という感じ。また、展開部に入ってからの、弦楽器が低い音域で第2主題を延々と歌い交わす所(ここはこの曲の演奏の試金石だと思います)の表情づけが素晴らしい。隅々にまで彼の意図が浸透していると思います。
 第2楽章・第3楽章も良いですが、第4楽章はのっけから弦合奏が豊麗な音を出し始め、圧倒的な感銘を受けます。しかし、決して必要以上に訴えることはなく、クライマックスの弦楽器が音を引き延ばす所でもむしろサラッとしている印象で、それも私には好ましいです。

 以上ですが、こうして書いてみるとピリオド演奏(もしくはピリオドもどき?)がどこでも主流のように思えますが、サラステのような真っ正面からの演奏もあり、聴く者にとって選択肢が増えてきているのは実に喜ばしいことと思います。私にとっては、最も喜ばしいのは昔と違ってネットラジオがあることで、お蔭様でヨーロッパの空気に少しでも触れられるのは嬉しい限りです。