テオリンの「ドラマティック」

どうにもコペハン「ジークフリート」でテオリン・ブリュンヒルデが、初めて部屋の中から出てくる笑顔が脳裏から焼き付いて離れなくなり、困っています。この演出は、よく笑う演出なのですが、とりわけこのシーンの笑顔は印象的です。というか、これ以上、無邪気に笑えるか?・・・という。
そろそろ「黄昏」を見ようと思うのですが、どうもこの人をつらい目にあわせて良いのだろうか(笑)という気がしてしまい、心の整理がつくまで、Youtubeなんか目にして、お茶をにごしております。
それにしても、テオリンさんは、もともと自分にはまる声だと思っていたのですが、コペハンを聴いたら、予想以上にストライクでした。いろいろ(と言っても、そんなに色々な音源がない。今のところ「指輪」で十分でもありますが)、聴いてみると、彼女の最大の特徴はヴィブラートですね。他のブログでもそのようなことを書かれてる方がおり、「ヴィブラートはあるが、ピッチは正確なので、ごまかすヴィブラートではない」とありました。なるほど。ヴィブラートというのはピッチの不正確を隠す手段になるのか。初めて知りました。
私の最も好きなワーグナー・ソプラノは、アストリッド・ヴァルナイなのですが、考えてみると、その点、テオリンとは全く違っていて、ヴァルナイの特色は、ヴィブラートではないですね。ただ、なぜ共通しているのかと言うと「ドラマティック」だからです。でも、この前も触れたように、この概念が鬼門です。なんで、そう聴こえるんだろう?
最近、ニルソンと比較してみて、ちょっとわかってきたのですが、要は、音の伸ばし方、強弱の付け方、子音の使い方にミソがあるような気がします。比喩的ですが、セリフが単語の集積ではなく、抑揚のあるメリハリの効いた文章になっているような、そんなイメージなのですが。もうちょっと、いろいろ聴いてみたいと思います。

バイロイトの「トリスタン」DVDが売り出されているので、これは必ず聴かねばと思います。下記のYoutube映像は、この演出のプロモみたいなものなんですかね。
http://www.youtube.com/watch?v=n5uu0PYqAmM&feature=related
うーむ、演出は、そんなに期待薄か?でもまあ、トリスタンは、音楽だけで十分聴けるという側面があるから、いいですね。

ジークフリート第3幕の「永劫の・・・」もありました。
http://www.youtube.com/watch?v=D5DPw6wnNRQ
これは、たぶんメトの絵だと思うので、何も書いていませんが演奏もメトでしょうね。これを聴いていると、最初の歌いだしのところで、ちょっとくぐもっているような気が(空気が入っている?)したのですが、これ、この前の新国立でも少し感じました。あと、強弱の変化がとても激しいので、これがダメな人というのが、実は結構いるような気がします。特に、最後の方の、O Siegfried! Leuchtender Spross!のLeuchtenですね。私は、全然OKですが。極端な話、こういう表現がはまっていれば、ピッチの揺れとか余り気にならないぐらい。ちなみに、コペハンDVDのほうは、基本は同じですが、よりマイルドでした。Youtubeのほうは、歌い終わった後にジークフリートが、ちょこっとだけ出てくるのですが、これはどうもな・・・。誰か良く分からないのですが、アナセンと比べると差が歴然です。ここは大事な箇所ですね!全身全霊でやってもらわないと困ります。

もう一つ、トゥーランドットもありました。私、実はイタリア・オペラをきちんと聴いたことがないので、あまり語れないのですが、聴かないのは、聴きたくないのではなく、時間と予算の限界に縛られているからだけなのです。しかし、トゥーランドットは、音楽がかかっていると、聴き惚れてしまいます。一番ワーグナーに近いような気が。というと、プッチーニのファンに怒られるんですかね(笑)。素人の妄言ですので、無視してください。
http://www.youtube.com/watch?v=tuIGfWwjd5I&feature=related
これをなんで出したかと言うと、コメントが面白くて。「テオリンはいいが、この役には全然あってない」とか、「これはリリカルな歌だ、ドラマティックではない」とか散々です。知らない私が聴くと、「そうなのか?いいような気がするが?」という感じなのですが、ちょっとこれは専門外(笑)なので、良く分かりません。

ワルキューレ」も改めて最後のシーンを聴いていたら、「私のしたことがそんなにいけないこと?」からのドラマが、まさに「ドラマティック」な感じがします。これ、やはり一番近いのはヴァルナイですね。
う〜む。完全にはまってしまった。でも、やはり、あまり音源がない。やはり「黄昏」を見るしかないですね(笑)。