「ルル」そして「黄昏」

「ルル」の第1幕第2場をアップしました↓(リンク先は、第2場の後半部分です)
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/269.html

この場面は、第1幕の白眉というか、音楽がものすごく充実しています。ルルとシェーンの対話もそうですが、シェーンが「画家」を自殺に追い込んでいく所の強迫的な音楽も、すごいなあと感じます。
このシーンでは、画家がルルに対して抱いている訳のわからない妄想をシェーンが打ち砕いてしまうのですが、ちょっと「やり過ぎ」な感じがします。まあ、シェーンは海千山千の出版社の社長という設定ですから、これぐらいアクが強くないと世渡りできないということなのでしょう。しかし、そんな男がルルにだけは抵抗できない、という所が、面白いところではあります。

訳しながら一つ気になったのは、この中でアルヴァが言う「パリで革命勃発!」の「革命」とは何を指しているのか、ということです。1848年の2月革命と1871年パリ・コミューンしか考えられないような気がするので、ずっとそう思っていたのですが、ここでシェーン博士は「電話」をかけているんですよね・・・。
だとすれば、48年の線は消えると思うのですが、71年でもどうなんでしょうか?そうすると、時代設定は「現代」(19世紀末から20世紀初頭)で、「パリの革命」という言葉自体が、具体的事件ではなく、何らかの比喩なのでしょうか?よく分からなくなってきました。

それはそれとして、音楽的にいうと、この場でベルクは、ソナタ形式やら舞曲やら器楽曲の形式を有効に活用しているらしく、それがリブレットにも書いてあったりするのですが、私のような素人には余り良くわからないですね。それを特に意識しなくても楽しめるところが良いところだと思います。
ところで、器楽曲の形式を、いわば換骨奪胎的に使用するという手法を最初にやり出したのは、どうもワーグナーのような気がします。特にそれを感じるのは「黄昏」の第1幕のギービヒ家の場面で、3拍子の舞曲風の音楽が、わざとそらぞらしく「器楽曲」風に繰り返されているように思えます。(あくまで印象なので、ホントにそうかどうかは良く分かりませんが)
どうも、こういう部分を面白いと思ってしまうのは、我ながらどうなんでしょうかね?クナの58年版では、ハーゲンのヨーゼフ・グラインドルはもちろん、グンターのオットー・ウィーナーもはまっていて、いつも身を乗り出して聴いてしまいます。

と思ったら、今アップしながら聴いていたベーム指揮の「ルル」(68年の録音)では、グラインドルはシゴルヒを歌っていますね。さすがに芸達者で、けっこう笑えます。ハーゲンを引退すると、シゴルヒになるのか?という点も笑えますが。
どうも、この頃の歌手は歌もすごいですが、「演技派」な人が多いですね。ヴァルナイも、「エレクトラ」のクリュタイムネストラとか、「イエヌーファ」のコステルニチカとか歌っていて、しかもはまっていたりします。もっと若いころの映像がないのか・・・?と思うのは私だけでしょうか。

最後に、Youtubeを見ていたら、クリスティーヌ・シェーファーの「ルル」の第1幕の第1場(残念ながら第2場が見当たらないので)があったので貼っておきます。この演出はオーソドックスですね。
http://www.youtube.com/watch?v=m1cIVcel9TY&feature=related