出たり入ったり〜ジークフリート第2幕

相変わらず「ジークフリート」の予習中です。
前回、アルベリヒとミーメの掛け合いの音楽の面白さについて触れたのですが、この二人は、ジークフリートファフナーの洞窟に指輪と隠れ頭巾を取りに行っている間に舞台に出て来て、充実のコント(?)を繰り広げます。
そこで気がついたのですが、登場人物が出たり入ったりする手法というのは、オペラでも演劇でもよく使われる手法ですが、ワーグナーは、あまり使わないですね。というより、この「ジークフリート第2幕」だけかもしれません。(「マイスタージンガー」では、ベックメッサーがザックスの歌を盗む場面が似ていますが、これほどではない気がします。)

この幕の登場人物の入れ替わりを、念のため整理してみると・・・

第1場 アルベリヒ ⇒ アルベリヒ・ヴォータン ⇒ アルベリヒ・ヴォータン・ファフナー ⇒ アルベリヒ・ヴォータン
第2場 ミーメ・ジークフリート ⇒ ジークフリート ⇒ ジークフリートファフナー ⇒ ジークフリート(森の小鳥の声)
第3場 アルベリヒ・ミーメ ⇒ ジークフリート(森の小鳥の声) ⇒ ミーメ・ジークフリート(アルベリヒの声) ⇒ ジークフリート(森の小鳥の声)

やっぱり、なかなか出入りが激しいです。ワーグナーでは、限られた登場人物が長い会話をすることが多いため、同じ幕の中で「人物」ではなく「場面」が変化します。ワーグナーは、この手法を多用し、その間を切れ目なしに「舞台転換の音楽」でつなぐ名手です。
ジークフリート第3幕」は、そうしたワーグナー好みの形式の好例です。最初はヴォータンとエルダ、次にジークフリートとヴォータン、主導権がジークフリートに移ると、場面も変わってブリュンヒルデの目ざめのシーンとなります。場面転換の炎を乗り越えていく音楽が、ホントに素晴らしいの一言です。

ですから、「第3幕」に比べると、この「第2幕」は、一番「普通のオペラ」に近いと言えるのではないでしょうか。

その点、「第1幕」では、場面も変わらず、人物も変わりません。私を初め多くの方が、ここで「指輪」全体の「中だるみ感」を感じるようなのですが、これはそういう理由ではないですかね?
しかし、「ティーレマン・リング」は、なぜか、この幕がとても良い(さすがに拍手もすごい)ので、今回の新国はどうかなあ、と思います。