ジークフリート第3幕〜輝きながら愛し、笑いながら死のう〜

新国立劇場の『ジークフリート』を見に行く予定なので、下準備のためCDを聴いていたら、第3幕のジークフリートブリュンヒルデのシーンを訳したくなり、「オペラ対訳プロジェクト」に掲載させていただきました。
私は、このシーン大好きなのです。「あなどらないで!私は神の娘よ!」とばかりプライドの高いブリュンヒルデなのですが、いったんヒステリックになった後、『ジークフリート牧歌』のメロディーが優しく出てきます。今回は、そこから訳しました。

それにしても、訳していると改めて気付くのは、ブリュンヒルデのセリフの過激さです。特に、最後の二重唱は、「神々の世界など滅びてしまえ。神々の黄昏よ、やってこい!」と、もうスゴすぎです。これは、半分「人間」として生きることを決意したブリュンヒルデが、こうして過去を振り捨てるということだと思います。
なお、その直前のジークフリートのセリフには『トリスタン』のセリフのそのままの引用(どっちが先かは微妙ですが)もあるのが面白いです。

一方、ジークフリートの歌詞は、彼らしく能天気というか、単純に明るいですね。でも、ブリュンヒルデに引きずられて、最後は、タイトルに掲げた歌詞「輝きながら愛し、笑いながら死のう」をブリュンヒルデとともに歌います。この最後のセリフは、原文では名詞で終わるのですが、私のように訳したほうが日本語としてはスッキリするのではないかと思います。
これ、キャッチコピーにでもなりそうなセリフですが、良く考えると、やっぱり不吉ですよね・・・。

音楽の明るさにだまされて、セリフも明るいように思えますが、そうではないです。ブリュンヒルデが言うとおり、『神々の黄昏』がもう始まっているということですね。その奥行きの深さが、このシーンの感動を生み出しているように思えます。

対訳は、コチラをご覧ください。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/195.html