『魔笛』の演出

「オペラ対訳プロジェクト」での『魔笛』の翻訳を終わり、すべてアップしました。
これを見ながら、『魔笛』第2幕を聴いています。不思議なもので、翻訳すると、作品が我が子のように可愛くなり、抱きしめたくなります。
聴いているのは、ジャン・ピエール・ポネル演出の1982年のザルツブルク音楽祭のDVDなのですが、最近、映像は見ないでCDとしてばかり聴いています。この演奏、キャストがすごいです。ウィーン・フィルを指揮するレヴァインもいいですが、タミーノはペーター・シュライアー、夜の女王はグルベローヴァ。パパゲーノのベッシュ、ザラストロのタルヴェラ、パミーナのコトルバスもそれぞれ素晴らしいです。私なぞが言うまでもない、世に隠れも無い名演ですね。
ポネルの演出は、いつもながら「きれいでロマンティック」です。「夜の女王」を取り巻く星雲などは、実演を見ていたら、さぞ印象的だったろうなと思います。しかも、それが徹底的に台本を読み込んだうえでのキレイさですからね。早世が惜しまれます。
ただ、一方で私は「バロック的」な演出にも心魅かれるものがあります。Youtubeを見ていると、2006年のザルツブルクの映像があるのですが、ここでは、「パパパの歌」の間、三人の童子が空中を飛び回っています。
私、こういうの好きなんですよね〜。ト書きでは、「彼らは、Flugwerkで降りてくる」とあります。たまに「宇宙船で降りてくる」みたいな訳があるのですが、ここで言うFlugwerkとは、バロック演劇で俳優を宙吊りする仕掛けのことですね。
おそらく、『魔笛』初演時は、彼らは「空中ゴンドラ」みたいなもので三人まとめて降りてきたんだろうと思います。というのは、彼らは、そこから更にパパゲーナを引っ張り出すわけですから。したがって日本語訳もそうしました。
それにしても、モーツアルトの音楽の素晴らしいこと。こんなに楽しませてもらっているのですから、足を向けては寝られませんね。
と思って、ふと考えると、東向きでも西向きでもヨーロッパに向いちゃうじゃないか!と思ったのですが、ラッキーなことに北に向けていました。
良かった、良かった。モーツァルトさま、安らかにお眠りください・・・