「死」について

年末から、フロイトの『モーセ一神教』という本を読んでおりました。
ちくま学芸文庫の渡辺哲夫氏の翻訳です。
私の理解では、「エス」(有機物を無機物へと解体する「死への欲動」)と「精神」とのせめぎ合いが、この本での(隠された)テーマなのだと思います。
渡辺先生の解説の趣旨は、「エス」(もしくは「自然」)論者のフロイトが、一神教という「精神」に直面して、「精神が先か、自然が先か」という最大級のアポリアに陥ったということだと私は理解します。
私は、実はこのアポリアは、ワーグナーの『指輪』と同じだと思います。しかし、それを表す手段として、オペラのような「芸術作品」とは一体何なのでしょうか?ワーグナー自身が、それを分からずにのたうち回っていたような気さえします。