『マイスタージンガー』(4)〜クラウス・フローリアン・フォークト氏のワーグナーアルバム

アンナ)『マタイ受難曲』ですが、私たちに隠れて、あんなことをやっていたとは・・・。ほとんどあきれてしまいました(笑)。
トマス)すでに、いい訳があると思うのですが、やはり自分で取り組んでみると、とても勉強になりますね。動画対訳は、すごく面白い試みだと思うので、これまで『マタイ』に触れたことがなかった方にも、ぜひご覧いただきたいと思います。
ヨハン)「訳者コメント」の「初級編」でアリアをいくつか見てみたのですが、「なるほど、こういう意味だったのか」と思ったことがいくつかありました。
アンナ)このカール・リヒターのディスクは「定盤」ですよね。私も持っているのですが、実はあんまりじっくり聞きこまなかったもので・・・。まだ、あまりシンミリした気分になってないのかも知れません。私は、むしろ古楽的な演奏のほうが好きですかね。
トマス)私も、わりとそうなんですが、そう思ってリヒター盤を聴いてみると、「ううむ。やっぱりこれはスゴイな」と思います。
ヨハン)さて、今日のタイトルは、マイスタージンガーですが(笑)。
トマス)そうでした。来週の日曜日は、いよいよ上野に聴きに行きます。今回来日するクラウス・フローリアン・フォークト氏のワーグナーアルバムを買って聴いてみたら、とてもいいですね。私は、この方は、かなり好き。

ワーグナー:アリア

ワーグナー:アリア

アンナ)私たちも買ってみました。どの曲がよかったですか?『トリスタン』第2幕の二重唱がけっこう良かったと思うのですが?
トマス)おお。そうですね。同感です。カミラ・ニュルンドさんのイゾルデもよいです。
ヨハン)肝心の(?)最初の『マイスタージンガー』の曲(「はじめ!」と)が、よく分からないのは、ぼくだけでしょうか?
トマス)いやいや(笑)。第1幕のこの2つの曲は、奔放すぎるというか、わけわからないところがありますよね。まあ、そこが面白いのですが。
アンナ)きっと、ベックメッサーをはじめ、わざと一般の人がわからないような曲にしているんですよね。私も、構造がよく分からないのですが、それはそれなりに面白いというか。2曲目(冬の日の静かな炉辺で)のほうは、それより全然分かりやすいです。ここの「ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァ〜イ」というところが、特に好きなんです。ウキウキしてきます。
ヨハン)ああ。なるほど、ここはいいですね。2曲目はいいですね。1曲目が分からなかったので、引いちゃいました。
トマス)次の「わが愛する白鳥よ」はイイですね〜。昨年の新国立劇場の公演でも、ここがとても心に残りました。すごく「異界の人」っぽいというか。
アンナ)同感同感。「グラール語り」も悪くなかったですが、こっちの曲のほうが良かったですね。パルジファルはいかがでしょう。
トマス)これも、けっこういいですね。フォークトさんは、基本的に「まっすぐ」な歌い方というか、その「まっすぐさ」がうまく行くときと、そうじゃない時がありますね。クンドリーのキスの直後のパルジファルは、もっと生々しい感じがしても、いいような。特に、第2幕の「助けてくれ。罪にまみれた者どもの手から」と訴えるところは、ちょっとライトすぎるかも。
アンナ)私も、はじめそう思ったのですが、二三度聴いてみると、意外とこれも新鮮な感じがありました。でも、「リエンツィ」を挟んで、やはりトリスタン役が思った以上にハマってます。この二重唱は、最近聴いたものとしては、かなり買いだなと私は思います。
トマス)そうですね。トリスタンが、こんなにピッタリ来るとは、実は正直思っていなかったので、よかったですね。
ヨハン)たしかに、これはすごくいいですね。ぼくは、カミラ・ニュルンドさんのイゾルデが、更にいいです(笑)。
アンナ)「オランダ人」のエリックもいいのですが、ストーリーを知っていると、このアリアは、女性としては「しつこいわね」と言いたくなるのが難点です(笑)。『黄昏』第3幕のジークフリートの「聖なる花嫁」もイイですね。若干ライトすぎるかも知れないけど。ただ、この「リリカル路線」は、わりとワーグナーの本質に沿っていると思います。そういうコンセプトでまとめているからいいのかな?オケもいい感じ。バンベルク交響楽団、なかなかやりますね。ジョナサン・ノット氏の指揮も、自然体な感じ。わりと昔からのファン向き?最近、そういう流れかも知れませんね。
ヨハン)最後は『ヴァルキューレ』のジークムントです。
トマス)これも悪くないですね。ただ、ジークムントは、もっと低い声で渋めのほうが、私は好きかな?
アンナ)やはりトリスタンが合ってますかね?もちろん、最後の「君こそは春」から第1幕の幕切れまでも、けっこういいんですけどね。
トマス)ニュルンドさんのジークリンデも、なかなかいいです。
ヨハン)こうやってCDを聴いていると、来週のライブが待ち遠しくなってきましたね。
トマス)指揮のセヴァスティアン・ヴァイグレ氏も、私は初めて聴きに行くので、楽しみです。バイロイトで振っていますから、まさに自家薬篭中のものだと思います。う〜む、楽しみですね。
ヨハン)なんだかんだ批判的なお話もされていますが、かなり『マイスタージンガー』って、お気に入りな作品なんですかね。
トマス)そりゃそうですよ(笑)。テクストがダントツで分かりにくいというだけで、音楽は、これぞワーグナーって感じですから。ちょっと考えてみたって、訳出したザックスの2つのモノローグはもちろん、第1幕の「前奏曲」から即座に合唱が始まるところとか、第2幕の楽しい前奏曲と、ザックスの「靴屋の歌」、最後の「殴り合い」とシーンとしたあとの「夜警の歌」、第3幕のエーファとザックスが二人でいるところにヴァルターが現れるあの夢のような音楽、五重唱、「目覚めよ」の合唱など、こんないいものはないですよ。
アンナ)ベックメッサーがどんな感じか気になりますね。けっこう成否を分ける重要なキャラですよね。憎めない感じでやってもらえるといいと思うんですよ。