ベートーヴェンの名無しのピアノソナタ(4)〜第2番〜

アンナ)「悲愴」(第8番)までの初期のソナタでいうと、私は「2番」のイ長調ソナタが好きです。特に第2楽章がいいですね。この、ゆったりとして、なんとなくエキゾチックな感じって、すごくいいと思います。。「ラルゴ・アパッショナート」という表記に、味がありますねえ。
ヨハン)ぼくもそう思います。この左手の簡単なモチーフが、なぜこんないい音楽になるんですかね?シンプルなのに不思議な魅力があります。
トマス)全曲を通して、すごくまとまっているような気もしますね。「作品2」は「1番」から「3番」までのピアノソナタが入っていますが、この曲が一番完成されているような気が・・・。ただ、「1番」「3番」ももちろんいいと思います。
アンナ)「1番」は、ある意味、実験的な感じがしますよね。いきなり「ヘ短調」から始めるところがすごい。それに比べると「2番」は、肩の力を抜いたような雰囲気です。
ヨハン)ベートーヴェンって、こういう「肩の力を抜いたとき」の曲もいいような気がします。
アンナ)第3楽章はスケルツォとありますが、まだメヌエット風ですね。優雅な中に、ベートーヴェン風なところがあって、私としては、とてもよろしい感じです。
トマス)第1楽章は、展開部がかなり充実していると思います。これは、第3番に至って、さらに進化しているような気がしますね。この、恐ろしく論理的なソナタ、つまりモチーフの徹底的活用ということですが、これを20歳そこそこの若者が作曲しているわけですよね。
ヨハン)古典的な形式の中に、ロマン派の胎動はすでに感じられますよね。
アンナ)それがすごくよく分かるのが、終楽章で突然出てくる「ダッ・ダッ・ダッダ・ダッダッ」と繰り返される音型ですね。4楽章は「グラチィオーソ」と名付けられているロンドで、最初のテーマは確かに優美なのですが、この音型のおかげで、全体としては優美じゃなくなります。
ヨハン)その音型って、なんか大砲をぶっ放すような感じですね。「フランス革命」って感じがするのですが・・・。考えすぎですかね?
トマス)いや・・・。作曲年代1793〜94年ですからね。全然深読みじゃないですよ。グルダで聞くと、特にそんな気が・・・。ですから、そう思って聞くのも面白いと思います。アンシャンレジームの優雅な世界に、突然割って入る砲声(?)。これを好きと感じるか嫌いかは、それぞれだと思います。
ヨハン)のちのベートーヴェンは、こういう場合、通常独特の諧謔で包むような気がしますが、この音楽は結構生々しい感じがしないでもありませんね・・・。
アンナ)そう考えると怖くなってきました・・・。
(※以下はIMSLPへのリンクです。)
http://imslp.org/wiki/Piano%20Sonata%20No.2,%20Op.2%20No.2%20(Beethoven,%20Ludwig%20van)