オペラトークを聴いて〜パルジファル公演(3)

本日、新国立劇場パルジファルのオペラトークを、u-streamで視聴することができました。
舩木篤也氏の解説は、「愛の二面性」という言葉で、この作品の「怖さ」を分かりやすく解説していたと思います。
何と言っても、指揮の飯守泰次郎氏のインタビューが楽しみだったのですが、これが面白かったです。リハ中ということもあるのか、カメラ越しですら気迫が伝わってくるような感じです。
飯守氏の発言で、私が特に興味深かった点を、順不同でまとめると以下の通りでした。(聴き違いがあるかも知れませんが)

・この作品で、ワーグナーは、キリスト教と仏教を独特な形で融合させている。
・(とはいえ)愛とか信仰とか言っても、やはりこの作品は生々しい人間のドラマである。
・「指輪」とは異なり、本作では、ライトモチーフの使い方は内面的になっている。
・二つの言葉がある。一つは、(第1幕の舞台転換音楽を導き出す)「ここでは時間が空間になる」。もう一つは、全曲幕切れの「救済者に救済を」。
・3幕前奏曲は、眠くなるところだが(笑)、これがパルジファルの「迷い」であることを理解して聴いていただきたい。
・全曲の終結は、一つのクエスチョンマークであり、はっきりした方向は出していないと思われる。クプファー氏も同じ考え。これはまだ言っちゃいけない(笑)ので、舞台を見ていただければ。
終結に「まだ先がある」と感じさせるのは、最後の音楽で、ソ(ドミソのソ)が宙吊りになっていて、そのあとにアコードが入ることでも感じられる。

いずれも大変興味深いのですが、3幕前奏曲の話はこの作品を理解する上で重要な点だと思います。オペラ対訳プロジェクトの第3幕の動画対訳の冒頭を貼っておこうと思います。
http://www31.atwiki.jp/oper/pages/2318.html
また、特に最後の点は指揮者ならではの観点で、考えさせられました。私の考えでは、この終わり方は、未来を感じさせるような余韻とでも言うような感じですが、このような発言があるからには、演出についても興味がふくらみます。
視聴後に、サイトをよく見ると、飯守氏のコラムもありました。http://www.nntt.jac.go.jp/opera/parsifal/column/02.html
このコラムでも、「時間が空間になる」と「救済者に救済を」の二つの言葉が取り上げられているのですが、この点について、私も自分なりの考え方があるので、この点については、稿を改めて述べたいと思います。
オペラトークは、最後に、本公演のカバー歌手である大沼徹さん(アンフォルタス)と、池田香織さん(クンドリー。公演では第1幕最後の「天からの声」として出演)が、それぞれ第1幕のアリア(憐れみを)と、第2幕の「幼な子」のアリアを歌われてました。いずれも熱演で、ピアノ伴奏で聴く機会は希少ということもあり、とても良かったです。
動画配信は、たいへん有難いので、ぜひ今後もしていただきたいと思います。